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炎雷落ちるその日まで / 鬼滅の刃

第54章 霞明ける、八雲起きる



ようやく収まった涙がまた出て来た。

「君達2人はよく似ているな」
「そうですか?」
「ああ」

彼が私の目から溢れる雫を大きな親指で拭ってくれる。

「あ、そうだ!似てると言えば……巧は善逸に物凄く嫉妬してましたよ」

「ほう、桐谷くんがか?何故だ?」


自分は6つの型を全て使用出来ているけど、満遍なくなくこなせると言うだけで、極める段階までは達していない。善逸は壱ノ型しか使えないけど、その分自分や他の隊士に比べて放つ回数は増える。

積み重ねが多いから、威力や洗練さ。習熟度は敵わないんだ…そう言っていたと杏寿郎さんに伝えると、なるほどと頷いてくれた。


「私も同じです。杏寿郎さんに凄く嫉妬しています」

「俺にか?」
一瞬きょとんとする彼。

「はい……大好きな人に嫉妬するなんておかしな話かもしれません。でも私とあなたは同じ呼吸を使います。自分が時間をかけて編み出した新しい型やその改。それを杏寿郎さんは瞬く間に自分の物にしてしまいます……」

「………」
ここで言葉が一瞬止まる。

「うむ、それから?」
彼の顔が先程よりも自分に近づき、続きを促してくれる。

「柱と一般隊士では経験値が違うから仕方ない事なんですけど…これがもう悔しくて悔しくてたまりません」

私は真っ直ぐと彼の目を見て伝える。

「そうか」

そう一言呟いた彼は、私の両頬に置いていた掌を後頭部に伸ばした———かと思うと、包み込むように抱きしめてくれた。

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