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炎雷落ちるその日まで / 鬼滅の刃

第54章 霞明ける、八雲起きる


「随分と可愛らしいお岩さんだな」
「10分以上泣き続けていたんです。仕方ないです…」

「あの日もこんな瞼をしていた」
「あの日……?」

君に初めて会った日だ…彼はそう言うと、また腫れ上がっている私の両瞼に優しく口付けを落としてくれる。

あの日……それは巧が亡くなった事を知って、泣きはらした日の事だ。その時も今と同じように瞼が腫れて、お岩さんのような瞼になった。

「長友さんから巧の事を聞きました。吉沢さんが亡くなった時に、巧と少し話をしたそうですね。杏寿郎さんが長友さんにお願いしたって…」

「ああ、その時の事はよく覚えている」





———-砧村(※1)にある氷川神社での任務。巧と同じ雷の呼吸の使い手であり、先輩隊士の吉沢さんが派遣された。
彼以外に向かった隊士が全員負傷。近くにいる隊士は至急応援を…との事で、その時氷川神社の1番近くにいた巧がそこに向かった。


けれど吉沢さんは腹部からの出血多量が原因で亡くなってしまう。悲しみに沈んでいた巧を激励してくれたのが、さっきまで私を励ましてくれていた長友さんだった……と言う事だ。


「元々派遣される予定だった隠の方が急に行けなくなって、長友さんに声がかかったと聞きました」

「うむ、そうだ。長友くんは風柱邸の専用隠になるまで心に傷を負った隊士達の話を聞く…そう言う事を長くやっていた時期があってな。それもあり、彼なら桐谷くんの力になれるのではないか。そう判断して、頼んだんだ」




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※1 現在の東京都世田谷区喜多見。

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