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炎雷落ちるその日まで / 鬼滅の刃

第54章 霞明ける、八雲起きる



「ほう、5つの刺突か」
「あァ?何だ、煉獄。初めて見たのかよォ」

「…俺は先日見た」
「む?冨岡、そうなのか?」

「ああ…」
「師範には当日まで内密って事かァ」

縁側にずらりと並んでいる柱達。杏寿郎の左隣には実弥が、右隣には義勇が座っている。

『確かに俺には言わないのが七瀬らしい』



恋人としての七瀬は、いつも自分に対しての好意や愛情をまっすぐにぶつけて来る。
しかし、剣士の七瀬はそれとは対照的。継子として胸の内に抱えているであろう葛藤や迷い。

そう言った思いは自分にほとんど言って来ない。
——ただし。
悔しさと言う強い感情だけは口にも態度にもしょっちゅう出す。


『あの時もそうだった』

杏寿郎は初めて彼女と勝負した日の事を思い出していた。かつては基本である壱ノ型の改。
しかし、今日は自分で編み出した型の改である。

『君はどこまで自分の呼吸を探究していくのだろうな』

彼は両腕を組み直し、傍らに置いてあるお茶を一口啜る。



「お前には敵わねェ。だから追いかけて行くんだとよォ」

「む?」

「自分と師範。その間にある距離は果てしなく遠い。遠いからこそいつかきっと…そんな風に思わせてくれる人だ。俺はそう聞いた」

実弥、そして義勇の発言を続け様に聞いた杏寿郎はすぐに嬉しい表情を顔に浮かべた。


『光栄な事だ。しかし、自分もまだまだ精進せねばな…』

師範は継子の行方を引き続き見守る。

『さて、時透はどう出るか……』
杏寿郎はまたお茶を一口啜った。


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