第54章 霞明ける、八雲起きる
午前10時半を回ると次々に来客が煉獄邸にやって来る。
まず最初に宇髄さん、雛鶴さん、まきをさん、須磨さん。
次にしのぶさん、カナヲ、蜜璃さん、伊黒さん、悲鳴嶼さん、不死川さん、隠の長友さん…と続いて冨岡さん。
兄弟子が家に上がって5分後——
「こんにちは、七瀬、今日はよろしくね。はい、これ。君、大好きなんでしょ?銀子から聞いたよ」
霞柱の来訪だ。
水縹色(みはなだいろ ※1)の双眸はビー玉を思わせる色で、相変わらず吸い込まれそうな印象を受ける。
そして、手に持っているのは私の大好物。文明堂のカステラだった。
「あ、ありがとう……無一郎くん、こんにちは。こちらこそよろしく……」
まさかこんな気遣いをしてくれるなんて思わなかったので、びっくりしてしまう。
「着替えするなら、客間を使って。用意してあるから」
「ううん、隊服のままで大丈夫だよ。お気遣いありがとう」
こうやって話していると本当に年下の美少年って印象なんだけどなあ。
腰の日輪刀を脱刀し、お邪魔します…と言いながら草履を脱ぐ無一郎くん。一連の所作がとても綺麗だなあと思った。
「時透!よく来たな」
「煉獄さん、こんにちは。今日はよろしくお願いします」
ペコリと杏寿郎さんに頭を下げる仕草もやっぱり綺麗。
「みんなもう集まっているぞ!このまま手合わせをしても良いか?」
「はい、構いません」
無一郎くんは何の躊躇いもなく、返答すると杏寿郎さんに案内されて庭に向かう。私もそれに続いた。
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※1……水色の事。