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炎雷落ちるその日まで / 鬼滅の刃

第54章 霞明ける、八雲起きる



8月上旬——

「七瀬……七瀬……」
「ん……杏寿……さん…おはようござ…おやす……」

「こら、起きろ。朝稽古をやるぞ」
「んっ……!」

口づけが私に降って来る。それも深い物が。
絡まる舌、なぞられる歯列 —— そして強烈に唇を吸われる音が静かな早朝の部屋に響く。

「……起きたな」
「……はい、おはようございます…」
「おはよう」

至近距離で見つめてくる日輪の双眸は今日も綺麗だ。

「これ以上進めると、歯止めが効かなくなる」
「ん……」
左頬を撫でられた後、口づけられると一気に目が覚める。


「目覚めの口づけにしては、随分強火ですね」
「仕方ないだろう、すぐに起きない君が悪い」

ほら……と背中に手を入れられると、上体をそのまま起こされた。

「やっぱり杏寿郎さんの所に来て良かったです。安心して眠れました」
「そうか」
「はい」

それから無事に起床した私は彼と朝の鍛錬を済ませた。

8月の太陽の日差しは朝から焼けるように暑い。1時間程体を動かすと、汗がなかなか収まらないし、日にも焼けてしまっているだろう。

湯浴みを済ませて、朝食の準備を千寿郎くんと一緒にした後、そのまま昼食の下拵えを少しする。


「いただきます」
居間に4人分の声が響く。今日のだご汁は久しぶりに私が作った。

「うまい!!!」 「わっしょい!!」

「七瀬さんが作った日はやはりさつまいもが多めだな」

「父上、今日のさつまいもはとても甘くて美味しいですよ」


———今日はとうとう無一郎くんとの勝負だ。
“一世一代”そう言っても良いだろう。

精一杯挑もう。

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