第52章 柱稽古に八雲挑む、の巻
カン、カン、カン、と木刀同士の小気味良い音が響き、一定の律動が続く。
七瀬は一度、実弥の木刀を払って後ろに飛び退いた。
呼吸を炎にするべく、スウ……と息を整える。
『何だ……?見た事ねェ構えだな…』
左掌をこちらに向け、右手に持った木刀を後ろに引いている。まるで弓道の弓を引くような動作だ。
七瀬を見た彼は、疑問符が頭を一瞬かすめるが、瞬時に自分も風の呼吸を出す準備をする。
『こいつはまた型を編み出したってわけかァ。本当おもしれぇ』
次の瞬間 —— 青柳色の羽織が助走をし、トン……と右足が地を蹴る。
「陸ノ型 — 心炎突輪」
型名を発する七瀬が持つ木刀はゴウ....と二重の炎に覆われていた。
『なるほどなァ、突き技か』
実弥は木刀を中段に構えると、防御にも使用出来るこの型を放つ。
「参ノ型 ——— 晴嵐風樹(せいらんふうじゅ)」
自分の周囲に激しい竜巻を連続で纏い、紅蓮の刺突を吹き荒ぶ風で絡め取った。
『判断も本当速い…このまま攻めてみよう』
七瀬が彼の間合いに入り、再び木刀が交わる。2人はその後20分程打ち合い、この日の鍛錬を終えた。
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「他に確認したい事はあっかァ?」
手合わせが終わった不死川さんと私は風柱邸の客間に移動して、座学を行っている。
「あ、さっき使用されてた参ノ型なんですけど。これって攻撃だけじゃなくて、防御にも使えるんですよね?」