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炎雷落ちるその日まで / 鬼滅の刃

第52章 柱稽古に八雲挑む、の巻


「ん……杏寿郎さん…?」
そよそよと優しい風が自分の顔に当たるのを感じて、ゆっくりと目を開ける。

「ちげーよ。煉獄じゃなくて悪りいな」
「あれ、私……」

「吐き切った後、気ぃ失ったんだよ。覚えてないか?」
「……そうでしたね」

部屋の中央に敷かれてある布団に寝ているようだ。
私にうちわで風を当ててくれたのは宇髄さんだった。ここは音柱邸の客間らしい。

稽古中の彼は真夏の太陽の下に佇む派手な鬼…この表現が正しいかどうかは不明だけど、それに近くはあった。

しかし、今は打って変わって穏やかな表情をした彼が傍に胡座をかいている。

「今、何時ですか?」
「ちょうど13時を回った所だな。お前、今日は非番だろ?何か用事でもあんのか?」

「いえ、特にはないんですけど……」
「どうせ早く煉獄の顔見たいとか、そんな所だろ」

「………」
「ほんっと、わかりやすい奴…」
プイッと顔を背けると、後ろからくつくつと笑う声が聴こえた。

「体、大丈夫なら昼飯食ってけ。嫁達がお前来るからって張り切って作ってたぜ」
「ありがたいです。それ聞いたら何だかお腹すいて来ました」

「それ、本気か?お前、本当単純だなー」
そう言いながら、宇髄さんはまた笑顔を見せた。






「お昼ご飯、ご馳走様でした。これもありがとうございます。気を遣って頂いて……」
お嫁さん達に持たせて貰ったのは、以前宇髄邸で集まった時にも食べた”とびきり美味しい”カステラである。


「文明堂も良いんだけど、あたし達はここのが気に入っててさあ」
「底のザラメが特に美味しいんです〜」
「そうそう、ザラメが美味しいの」

まきをさん、須磨さん、雛鶴さんが口々に言う。

「宇髄さん、今日は本当にありがとうございました」
「おう。ま、頑張れ」

こうして私は宇髄邸から煉獄邸に帰宅した。




玄関先で力尽きて寝てしまい、槇寿郎さんと千寿郎くんに自分の部屋まで運んで貰った......と言う事を、次の日杏寿郎さんから聞いた時はちょっと恥ずかしかった。

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