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炎雷落ちるその日まで / 鬼滅の刃

第52章 柱稽古に八雲挑む、の巻


「あの時、冨岡さんに勝てたのってやっぱりまぐれだったんでしょうか…」

詰め将棋が終わった後は、これもいつも通り。冨岡さんと縁側で甘味を食べながら話をする。今日はカステラではなく、以心伝心の新作だと言う”塩大福”だ。

皮や餡が塩で味付けしてあり、中には程よく甘みがあるこし餡と粒餡の2種類。
塩分が鍛錬後の体に、気持ちよく染み渡る。

「………美味い」
「冨岡さん、私の話聞いてます?確かに大福は美味しいですけど」


兄弟子はいわゆる”天然”と言われる性質だと思う。
相手と会話している時、思考が”今ここ”ではない別の次元に向かう。だからこんな風に会話が噛み合わない時がある。


「ああ、すまない……お前に迷いがなかったからじゃないか」
お茶をごくっと飲んで、今度はこし餡の大福を食べ始める。どうやら気に入ったらしい。


「迷いですか……」
確かにそうかも。しのぶさんとの勝負前にやった詰め将棋は思考がスッキリしていた。

あの時はどうしてその状態になれたんだっけ…。こし餡の塩大福をパクッと口に入れて私はゆっくりと咀嚼し始めた。

さらっとした餡が口内を満たしてくれる。餡を包んでくれている生地も柔らかく、もちもちとした食感だ。

……あ、思い出した。

「そっかあ」
「どうした?沢渡…」

「すみません。迷いがなかった理由がわかったんですよ」
そうか…と一言呟いた冨岡さんは、また一つ塩大福を食べ始める。

よし、帰りに杏寿郎さん達にも買って帰ろう。




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