第52章 柱稽古に八雲挑む、の巻
水柱との柱稽古………
カン、カン、カン…と小気味よく、お庭で兄弟子の冨岡さんと打ち合っている。
「沢渡」
「はい、どうしました?」
「……いいぞ」
「え?何がですか?」
兄弟子はいつもそうだ。一言だけをボソリと呟くから発言の意図を汲み取るのが大層難しい。
「突き技だ」
聞き出すのに2段階必要なんだよね…。それじゃあ望み通りに!
カン——!と一度彼の木刀を払って後ろに飛び退き、そのまま間髪入れずに膝を曲げて地を蹴り、走り出した。
「炎の呼吸・陸ノ型」
右手に持っている木刀の周囲が半分程炎に包まれた後、その上から炎が重なり、二重の炎になる。次の瞬間、私は右足で再び地を蹴る。
「—— 心炎突輪!(しんえんとつりん)」
先端から繰り出された炎の斬撃が槍のように細長くなった後、空気と混ざった炎の突きが兄弟子に向かっていく。
「水の呼吸・壱ノ型 —— 水面斬り」
槍のように細くなった紅蓮の斬撃は、冨岡さんに一閃された。
「漆ノ型 —— 雫波紋突き」
続いて速い突きが自分めがけてやって来たので、昇り炎天で対応。
そこから、また2人で木刀で打ち合っていった。
——— 30分後…
パチン。
終わった後は将棋盤を間に挟み、恒例の詰み将棋だ。
「……王手」
冨岡さんが静かに呟く。ああ、また私の負けだ……残念。
ふう…と一つ息をついた後、参りましたと彼に向かって頭を下げた。