第8章 炎の息吹が開く時 +
「合うか合わないかと問われれば、合うと言えましょう」
ええええ??
私は左にいる煉獄さんを凝視した。だから、それってどういう事??
「やはりそうなんだね。では杏寿郎。七瀬の事をよろしくね」
「—— 御意」
煉獄さんはお館様に返事をした後、私にこう言った。
「君とは縁がありそうだ。これからよろしく頼む」
「はい」
少し混乱していたけど、ひとまずは笑って彼に返事を返した。
煉獄さんの継子かあ。
でも炎柱の継子って確か……そう頭の中で思い出し始めた時。
「だが!女子と言えども、隊士は隊士。そこはわかっているだろうな?」
うっ……やっぱり噂は本当なんだな。私はこめかみから冷や汗が流れ始める。
それでも、それよりもこの人の元で強くなりたい。その思いの方が遥かに勝っていた。
「覚悟は出来ています。よろしくお願いします」
「うむ!」
ペコリと頭を下げると、煉獄さんは太陽を思わせる快活な笑顔でニコッと笑ってくれた。
『わあ。見ているこっちまで元気にしてくれる笑顔だなあ』
その時。
私の胸の中に温かくて、ほんのりと甘酸っぱい。そんな思いがポッ……と灯った。
『あれ……どうしたんだろ?私……』
とくんとくんと緩やかに鼓動が速くもなる。次の瞬間 —— ずずいっと隣から距離を詰められ、尚且つ両肩をガシッと掴む煉獄さんだ。
「君に聞きたい事がたくさんある!まずはだな……」
「わっ、ちょっと煉獄さん。顔近いし、肩が痛いです!!それにお館様も見ていらっしゃいます……」
私はパシパシと彼の右腕を軽く叩いて嗜める。
「君達は本当に仲が良いんだね」
「いえ、あのお館様。これはあくまでも師範と継子ですから…」
「お館様!それでは積もる話もあります故、これで失礼致します!!」
「うん、じゃあ七瀬。頑張ってね。杏寿郎、頼むよ」
「御意!」
こうして鬼殺隊の当主と奥様があたたかい目で見守ってくださる中、煉獄さんと私の師範と継子”の関係が始まったのである。