第49章 爪に緋色、唇に曙 、心に桃色をのせて +
「あ、そうだ。何か忘れてたなあと思ってたら…」
「?…七瀬?今度はどうした?」
「はい、何度もすみません…。炭治郎なんですけど」
「?…竈門少年がどうかしたのか?」
死角になって見えづらいとは言うからには、口付けが一回では終わらないような予感がした。やっぱりちょっと恥ずかしいから、私はスッ…と体を少しだけ後ろに下げる。
その代わり繋いでいない方の彼の左手に自分の右手を上から重ねると、この行動は予想出来なかったのか、彼の大きな目が一瞬だけ見開かれた。
今日は7月16日。2日前の14日が彼の誕生日だったと杏寿郎さんに伝えると、そうか…!と見開いていた目に続き、顔に笑顔が現れる。
「来週、合同稽古ですよね?善逸と伊之助も来ますし、せっかくだから稽古後にみんなでちょっとしたお祝いしませんか?」
「うむ、それはとても良い案だな!是非やろう」
「ありがとうございます!今日もタラの芽の天ぷらを美味しそうに食べてたから、天ぷら作るのも良いかもです。伊之助も大好きですし……」
「そう言えば春の時期に天ぷらを皆で食べた時も、1番張り切って食べていたな。ん?あの時は猪頭少年の誕生祝いだったか…」
「……そうですね。伊之助の誕生日を祝いました。暑い時期に揚げ物は大変だったりしますけど、塩胡椒で食べる美味しさは格別です」
「うむ!楽しみにしておく」
それから新宿駅に着くまでの間、合同稽古の内容について、柱で集まる親睦会が煉獄邸で行われる事、その際に無一郎くんとの勝負を決行しよう、などなど。
色々な話をしながら私達は槇寿郎さん、千寿郎くんが待つ家へと帰宅した。
無一郎くんか……。ダメ元で柱の皆さんにお願いしてみよう。
———私はある計画を頭に思い浮かべていた。