第49章 爪に緋色、唇に曙 、心に桃色をのせて +
「杏寿郎さん」
「どうした?」
「私が以前、煉獄家の男性は皆さん太陽だって言ったのを覚えてますか?」
「ああ、覚えているが…それがどうかしたのか?」
「ええ…あれ、季節の太陽にも例えられるなあって思って…」
「面白そうだな。聞かせてくれ」
「ありがとうございます!まず杏寿郎さんは今真上に出ている夏の太陽で…」
それから、千寿郎くんは春の太陽。槇寿郎さんは秋の太陽…と彼に伝えていく。
「千寿郎くんは暖かい春で…槇寿郎さんは落ち着いていらっしゃるから、日差しが柔らかくなる秋」
「ふむ、では俺が夏と言う理由は?」
杏寿郎さんが私の顔を覗き込んでくる。
これ言うの、少し緊張するけど…どうしても伝えたいから思い切って私は言葉に出した。
「四季の中で私は夏が1番好きなんです」
「ほう、それは嬉しいな」
「夏は空が鮮やかで綺麗だなあって毎年思ってて。蝉の鳴き声も夏を感じれるし、甘味も夏ならではの物も出て来ますし、雨上がりの虹も綺麗だし…それに何と言っても、この空気感ですね。この時期が来ると、気分が物凄く高揚して。朝からとても良い気分で過ごせるんです」
「…そうか」
「はい!そして、今日また一つ夏が好きな理由が増えました」
「……と言うと?」
もうここまで言っているからわかっているだろうに。彼は相変わらず私からの言葉が聞きたいようで、それを待っている。
「縁結び風鈴をあなたと一緒に見に来れた。それが本当に幸せです。誘って下さってありがとうございました」