第49章 爪に緋色、唇に曙 、心に桃色をのせて +
「杏寿郎さん…美味しすぎて涙が出そうです」
「ははは、そうか!良かったな」
10分後、私はあんみつを食べながら感動していた。
文明堂のカステラを食べた時も衝撃が凄かったけど、中川屋のあんみつの素晴らしさと言ったら。
サイの目状に切った寒天に、茹でて冷やした赤エンドウマメ。
小豆餡に求肥(ぎゅうひ)と干し杏子。これに黒蜜をかけて食べているのだけど、相性がとても良くひと口食べた瞬間から舌鼓を打っている。
あんみつと一緒におぼんに置かれている抹茶も苦味がちょうど良い。
杏寿郎さんが20本目のみたらし団子を「うまい!」といつもの調子で食べている様子から察するに、お団子も絶品なんだろう。
笑顔を見せる事がさほど多くないカナヲもにこにこしながらあんみつを食べているし、炭治郎もおかわりのみたらし団子を注文して食べている。
カステラ……絶対買って帰らなきゃ。
食べている途中だったけど、律子さんに声をかけてカステラを持ち帰りたい旨を伝える。
「ちょうど最後の一つだったんですよ!ツイてますね!」
そう言われた私の気分は、更に更に上がった。
「ご馳走様でした。お食事も甘味もとっても美味しかったです」
杏寿郎さんが全ての会計を済ませてくれている間に、私は未菜子さんにお礼を伝えた。
「仕込みをたくさんしておいて良かったよ。ダンナがね、今日は特に繁盛の予感がするって言ってたの。こういう予想が得意な人なんだけど、流石に驚いたよ!」
牛鍋定食もみたらし団子も、用意していた3分の2程の量を杏寿郎さんが食べてしまったそうだ。