第49章 爪に緋色、唇に曙 、心に桃色をのせて +
パンパン、と胸の前で両手を2回打った後、手を合わせて心の中で祈った。
それが終わると本殿に向かって深いお辞儀をして終わり。
これが俗に言う”二礼二拍手一礼”である。
「では回廊に行ってみよう」
「はい」
杏寿郎さんが私の左手を自分の右手で絡めてくれる仕草が自然で、心がほんのり温かくなる。
本殿から歩く事1分弱。
鳥居をくぐった時も見えていたのだけど、江戸風鈴の回廊が向かって左側に飛び込んで来た。
「わあ!綺麗。本当にたくさん風鈴がありますね…」
「うむ、これは見事な物だ!」
決められているかのように浴衣姿の人々が列をなし、回廊に入る順番を待っているようで、私達2人もそれにならって並んだ。
前にも後ろにも人、人、人。
自分の左手に絡んでいる彼の右手が、きゅっと繋ぎ直される。
「杏寿郎さん……?」
「はぐれたら大変だからな」
「ありがとうございます」
一列、二列と前の人達が順番に回廊の中を進んで行き、いよいよ私達も回廊の入り口に立った。
コの字型の回廊は檜の木で建てられている。
その天井に入り口からあまり隙間を空けず、横一列に。
そして左右の側面にも吊るされているたくさんの色の風鈴達。
時々吹くそよ風に揺らされて”ちりんちりん”と可愛らしい音を鳴らしている。
赤、黄色、青、緑、透明…。本当に様々な色の風鈴が目と耳を楽しませてくれた。