第49章 爪に緋色、唇に曙 、心に桃色をのせて +
「よく似合っている」
出かける前に何回も彼に褒めて貰ったのだけど、赤系統の衣服は本当に着る事が少ないので、まだ少しだけ落ち着かない。
中紅色は赤と言うより、桃色に近い色で”女の子だなあ”と感じれる色。
そういえば先日のカナヲはこんな色の着物を着ていたっけ…
色々考え事をしていたら、車道側を歩いてくれている杏寿郎さんに繋いでいた左手を急に持ち上げられた。
「む?これは緋色と青柳色か?」
「そうです…」
今日は自分で爪紅を塗ったので、彼は私の爪にのっている色をこの時初めて見た。左右共に親指、中指、小指には緋色を。人差し指と薬指には青柳色を塗っている。
「なるほど」
杏寿郎さんは目を少し細めて嬉しそうに言うと、私の左手と自分の右手をより一層強く絡める。
「特別な1日になるなあって思ったから、この2色にしたんです」
緋色は彼の、青柳色は私の羽織の色だ。
「いつも色々考えてくれてありがとう」
「いえ、何色にしようか考えるのも楽しいので」
やはり今日も俺が塗りたかったな…その呟きには、また次回お願いします、と返答すると杏寿郎さんはとても嬉しそうな顔をした。
川越駅から歩く事、15分。氷川神社の境内が見えて来た。
「凄い人ですね。皆さんやはり風鈴でしょうか」
「間違いないな」
境内がある敷地内は溢れ返る人達。家族で来ている人も多いけど、私達と同じ恋人同士で来訪している人達が多い気がする。
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※ 2人に歩いて欲しかったので所用時間は15分としましたが、実際は徒歩だと25分かかるので、駅からバスに乗るのがオススメ。バスだと10分です。