第49章 爪に緋色、唇に曙 、心に桃色をのせて +
“甘味処”
これには脳と耳が反応してしまい、どんな所ですか??と体を前のめりにして聞き返すと、杏寿郎さんに笑われてしまった。
「君は本当に甘味には目がないのだな」
「女の子は殆どの人が好きですよ、私だけじゃないです。でも珍しいですね。杏寿郎さんが甘味処に行きたいだなんて」
「うむ、実はその店はな……」 「間もなく川越ー川越ー」
「着いたらまた改めて」
車内放送と彼の話しだした頃合いが丁度重なってしまった。
「はい、わかりました」
そう応えれば先程乗り換えた時と同じように杏寿郎さんが右手を差し出して来たので、左手を載せる。
終着駅である川越駅を降りて、神社に向かう道を2人で歩く。
やはり考えている事が同じなのか、周りにいる人達もみんな神社の方角に向かっている。
そして、今日も電車に乗車する前からしょっちゅう気になっていたのが杏寿郎さんに対する女性達の視線だ。
本当に凄いんだよね。羨望の眼差しが…。
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川越鉄道… 1895(明治28)年に国分寺~川越までが全通。