第8章 炎の息吹が開く時 +
残念?
それってどういう??
私が煉獄さんに聞いてみようとした瞬間——-
「お館様、再度おなりです」
かわいらしい声が響いた直後。鬼殺隊97代目当主、産屋敷耀哉様が再び私の前に姿を現した。
★
「杏寿郎、よく来たね。待っていたよ。それから七瀬、待たせてしまって悪かったね」
お館様が脳に響く心地よい声で、私達2人にそう言った。
「とんでもありません!素晴らしいお庭をたくさん堪能出来て幸せでした!」
私は普段より大きめの声でお館様に返答してしまった。
だってこの声を聞くと、とても暇を持て余していた……とは言えない。言えるわけがない。
「巧の事はとても残念だったね。本来ならここに来て鳴柱の襲名をしているはずだったのだけど」
「………」
「きっとみんなに慕われる鳴柱になっていたと私は思うよ」
「そのようにおっしゃって頂けて私も嬉しいです。ありがとうございます」
涙が出そうだった。
だって本来なら私じゃなくて彼がここにいるはずだったのだから。