第2章 紫電一閃、青天の霹靂 ✴︎✴︎
「おっ、綺麗に焼け始めたな」
「えっ?」
持っていた日輪刀を両手で構えて、声のした方に体を向けると10メートル程先にその鬼は立っていた。
ニヤニヤとしている表情だ。嫌だな、この感じ……。
「ねえ、これどう言う事?」
私は先程感じた疑問を口にした。すると、彼は一層ニヤニヤを増長させ、にわかには信じられない事を言った。
「心臓を体の内部から燃やしてるんだよ。ただ燃やすだけじゃつまらないだろ?」
「燃やす………?」
自分の中で沸々と煮えたぎる気持ちが湧いて来るようだった。
そんな私を尚あざ笑うかのような鬼の発言が続く。
「だからゆっくりじっくり燃えるようにした。そいつはじわじわと苦しみながら………やがて死ぬ」
目の前の彼は私にそう言うと「愉快だ」と言わんばかりに、それはそれは不愉快な気分が最高潮になるかのような笑みを見せた。
今の今まで煮えたぎっていた気持ちが、急にフッと温度を下げていく。
「そんな……それじゃあ肺に空気が送れない……呼吸で止血が……」
———できない。
それを自覚した瞬間、気持ちの温度が更に急降下した。
目の前が真っ暗に染められていくかのような感覚だ。心に形なんて物があるとするなら、風船がぴったりとあてはまりそうだ。
空気を含んでいた風船に穴が空く。
そこから少しずつ少しずつ空気が抜けて行くように。
膨らんでいた気持ちがしぼんでいきそうだった。
だけど、だ。
私は頭を2、3回ふるふると振り、なんとか刀を構えたまま両足で踏ん張る。
そして —— 鬼をギロッと睨みつけた。
「へえ。いいなーその顔」