第46章 八雲心炎、燃ゆる立つ
「七瀬さんも兄上もとっても楽しそうに勝負されていますね!」
「そう見える?」
「はい!」
白日(はくじつ)を思わせる、癒しの笑顔を見せる千寿郎に七瀬は顔を綻ばせた。
ちらっと杏寿郎を見てみれば、槇寿郎と談笑している彼が見えた。
『炎柱に楽しいと思ってもらえている。こんなに光栄な事はないな』
七瀬は2本目に向けて、再度気合いを入れ直す。
『杏寿郎さんは不知火も炎虎もまだ打って来ていない。得意であろう型を打たない、と言う事は余力を充分に残しているんだろうな』
『さっき配分を考えながら動いているとは言ったけど、あれは半分はハッタリだ。最初の数分で自分の試合運びまで察する彼の洞察力には毎度の事ながら、目を見張ってしまう……』
紺色の胴着の紐を今一度キュッと結び直す。
「2本目…あの踏み込みには気をつけないと」
七瀬が決意したその時、槇寿郎から声がかかる。
「2本目行くぞ。準備はいいか?」
———— 最初から炎の呼吸で勝負だ!
この七瀬の想像は現実となる。
「2本目、始め!」
杏寿郎が一瞬で闘気を最大限に高めたかと思うと、力強い踏み込みで目の前の継子に向かっていく。
「壱ノ型」
「………!」
瞬きをする間に七瀬の目の前まで移動した炎柱が、鋭い横一閃の斬撃を放つ。
「———— 不知火!」