第46章 八雲心炎、燃ゆる立つ
「杏寿郎さんに初めて負けなかった……」
私は信じられない思いでいっぱいだった。
9ヶ月前より速く動けるようになった。1ヶ月前から再度タンパク質を含んだ食材を使用して食事を作っていた。
それを毎日のように摂取し続ける事で、筋力増加の為の骨組みが出来た。
嬉しいのは間違いない。けれど自分の相手は鬼殺隊最強の剣士の1人である炎柱だ。これで終わるはずがない。
それにさっき彼が放った漆ノ型。私が見た限り、実際に型として放ったのはあれが初めてのはず。
だから相殺で済んだのもあるんだろう。
能ある鷹は爪を隠すと言うけれど、杏寿郎さんは獅子のように猛々しい部分もある剣士だと思う。
先程剣を交わして実感した。
自分の筋力も上がったけど、また彼の筋力も上がった。呼吸を使った師範の太刀は相変わらず重く、両腕にその痺れがまだ少し残っている。
まだまだ見せてない鬣(たてがみ)があるはず……。それはきっと2本目で表出するだろう。
「七瀬さん、お疲れさまです。はい、これどうぞ」
手拭いで顔を拭いていたら千寿郎くんが竹筒に入ったお水を渡してくれた。ありがとうとお礼を伝え、ゴクゴク…と飲んでいく。