第46章 八雲心炎、燃ゆる立つ
ゆら……と杏寿郎の金色の髪が揺れる。
その足元からは熱く燃え上がる闘気がじわっと浮かんでいた。
『む…最初は炎の呼吸で攻めてくるわけではないのか』
対して七瀬の足元は始める前と変わらないまま。
『あの時と違って、今回は時間制限がある……だからまずはこの型から……」
「全集中 —— 水の呼吸!」
彼女は思い出す。狭霧山で炭治郎と共に修行に励んだ日々の事を。
兄弟子と剣を交える度に何度も何度も思った。
この人のような呼吸が使えるようになりたい、と。
水の呼吸の中で自分が一番やりやすい型はどれなのか。
無駄な力を入れずに放てる型はどの型なのか。
そうして試行錯誤した末に辿り着いたのがこれだった。
「肆ノ型」
七瀬の周囲に打ち付ける波が現れる。
「——— 打ち潮!」
これは兄弟子の義勇が最もやりやすそうにしている型だ。
ザアッ……と木刀からも海のような波の斬撃が繰り出される。
『前回と同じく、基本に戻る…か。ならば!』
「炎の呼吸・弐ノ型」
「——— 昇り炎天」
対する杏寿郎が放った型は炎の輪のような斬撃。
瞬間、七瀬の呼吸が変わった。
「炎の呼吸・捌ノ型」
海の波のような斬撃が赤く変化していく。
「—— 烈火の舞雲!!(れっかのまいうん)」
それは打ち付ける波から、燃えさかる炎の龍に変わった。