第46章 八雲心炎、燃ゆる立つ
——— 煉獄邸の庭にて。
「本当に梅雨に入ったとは思えませんね」
「そうだな」
今日は6月16日、水曜日。関東地方は先週から梅雨に入り、連日曇りや雨が降る日が続いているけれど、朝から気持ちの良い日差し。
そして……杏寿郎さんの継子になって丁度一年経った。
「丁度1年前か?君が俺の継子になったのは」
その言葉にふふっと笑いがこぼれる。
「む?何がおかしい?」
「いえ…私も同じ事を考えていました」
「そうか」
彼が頭上に出ている日輪と同じくらい眩しい笑顔を見せてくれる。
朝の稽古は軽めにして、柔軟をしながら彼と話していると、そろそろいいか?と槇寿郎さんが千寿郎くんと一緒に、縁側からやって来た。
はい、と答える私と杏寿郎さんはお互いに木刀を持ち、一定の距離を取って向き合う。
「今日の勝負は3本。時間はそうだな…1回10分で、休憩は間に5分挟むとしよう。先に2本先制した方が勝ちだ」
はい…と互いに返事をする私達に続けて、槇寿郎さんが言う。
「それから煉獄を放つのは禁止だ。家が吹き飛ばされてはたまらんからな……頼むぞ」
「……はい」
私も杏寿郎さんも苦笑い…。これに該当するのは確実に杏寿郎さんの方だろう。私の煉獄はまだまだだから。
「それでは——— 始め!」
9ヶ月前と同じように、炎柱との真剣勝負が始まった ——