第44章 継子達の恋、満開
「ただいま帰りました」
玄関の鍵を開けて、草履を脱いでいるとおかえり…と隊服姿の杏寿郎さんが迎えてくれた。
「あれ、杏寿郎さんお1人ですか?」
「ああ、父上と千寿郎は出かけている!」
「じゃあ、これ冷蔵庫に入れておきますね」
「む?」
彼と一緒に台所に向かい、買ってきたわらび餅を冷蔵庫に入れた。すると、後ろから杏寿郎さんが私を包みこむように抱きしめてくれる。
「…どうしたんですか?」
「ん?こうして欲しいのではないかと思ってな。君が寂しそうに見えた」
「ふふ。やっぱり杏寿郎さんには隠し事なんて出来ませんね」
そう言いながら、彼の方を向いた私は目の前の恋人にぎゅっと抱きついた。どうした?と言う言葉と一緒に私の背中に逞しい両腕が回される。
「巧の所に行って来ました。今日は善逸がいて…」
うむ、と1つ頷いた杏寿郎さんは私の頭を撫で始めた。
「亡くなって1年経ったね…とか、鳴柱になった所を見たかったね…って話してたら……」
そこから先は目から涙が出てきて、言葉が上手く紡げなかった。
「すみま…せ…ん。任務前なの…ひっく…に…」
鼻が詰まって話しにくい。目元の涙を拭っていたら、彼がその雫を口付けと一緒に受け止めてくれた。