第44章 継子達の恋、満開
「音」
「え?音?」
「少し寂しそうなんだけど、根底に温かい土台って言うかさ。しっかりと根付いているって感じの音が七瀬ちゃんから聞こえる」
……温かい土台、かあ。
「確かに巧の事を考えると、寂しくなる。それはずっと変わらないと思う。でも……」
うん、と頷く善逸に私はこう続ける。
「善逸と同じように、巧の事を大事にしてくれる杏寿郎さんが側にいる。だから寂しくても前を向かなきゃっていつも思える」
「七瀬ちゃん」
「うん、何?」
「惚気る事が出来るって幸せだよね」
「………そうだね」
「あーもう!今日さあ、俺単独任務なの。すっげー嫌だけど、禰󠄀豆子ちゃんに早く会いたいから頑張ってくる!」
「そっか……」
右手をグッと握って、表情をぎゅっと引き締める善逸。
「そろそろ行こうか。私も今日見回りなんだよ、不死川さんと」
その名前を聞いた瞬間、善逸の顔が一瞬で青ざめる。
「えええ……あの風柱ですか……」
「うん、あの風柱。想像出来ないかもしれないけど、不死川さんってすっごく優しいんだよ」
「ごめん、大分想像できない……優しい?不死川さんが??」
うん、と再度頷く私。
「いつかわかると良いね」
「俺、ずっとわからない気がする」
そして山吹色の羽織をはおった彼は、掃除用具をしまいに行ってくれる。
また来週の合同稽古で!そう声を掛け合った私達はそれぞれ帰路についた。