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炎雷落ちるその日まで / 鬼滅の刃

第44章 継子達の恋、満開


「久しぶりに君の涙を見る気がする」
大きな手が左頬を優しく包んでくれる。

「ん……そう…ですか…んぅ…」

自分が流した雨と一緒に、唇にも雨が届いた。それはいつも私に優しさと温かさをくれる杏寿郎さんの口付け。


左頬が包まれたまま、彼の唇がゆっくりと離れていく。

「本当はもっと君に口付けたいが、任務前だ。これですませておく」
彼はフッと笑って、またもう一度私に優しい口付けをくれた。

「お気遣いありがとうございます」

そして再びぎゅっ……と抱きしめられたので、私も彼の背中に腕を回すとそっと目を閉じる。


左耳を杏寿郎さんの心臓の部分にピタッとくっつけると、彼の規則正しい心音が聞こえた。これを聞くと心から安心出来るし、笑顔にもなれる。

「七瀬はそうするのが本当に好きだな」
頭上から恋人の声が柔らかく降って来る。

「はい、杏寿郎さんの心音を聴くと物凄く安心できるし、力も貰えるんです」
そうか…と彼は言うと、私の頭をまた撫で始めた。

槇寿郎さんと千寿郎くんが帰宅するまでの10分間。短い時間だったけど、とても大事なひとときだった。

夕日が沈むように私の心が暗く落ちてしまっても、1日の始まりに昇る日輪のような力強さでいつだって光を照らしてくれる。

やっぱり杏寿郎さんは”朝日”だ。




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