第44章 継子達の恋、満開
そこには隊服を着た善逸がいた。山吹色の羽織は墓地だからか、左手に掛けている。
そして、お墓自体も墓石の周りも既に綺麗に掃除してあった。
「一緒になったのって初めてだよね?いつもお花ありがとう」
「いや、全然。こんな事ぐらいしか出来なくてごめん」
「充分だよ。月に一回こうして来てくれるんだから。ちゃんと巧を覚えてくれる人がいるんだなーって思うと本当に嬉しいし、ありがたいよ」
そう言えば同じような事を杏寿郎さんにも言ったな。懐かしい。
私は善逸の左横に移動した後、目を瞑って両手を合わせる。
“良かったね”と言う思いと、最近の自分の近況を報告して目を開けた。
「その色見ると、巧さんの羽織を思い出す」
彼はそう言うと、少しだけ目を充血させる。
「着てこれる時はこれで来てるの。ほら、スターチスと同じでこの色が”途切れぬ記憶”だから」
「そっか……」
「うん……」
2人で巧のお墓をじっと見つめる。
「1年経っちゃったね」
「うん……」
「やっぱり鳴柱になる所、見たかったなあ」
「……そうだね」
もう絶対に叶わぬ願いをこうして口に出来るのは、今一緒にいるのが善逸だからだろう。生前彼と本当に仲が良かったので、普段巧について周囲にあまり言えない事も言えてしまう。