第43章 ★ 獅子なる星が降る夜に〜彼目線〜 ★ ✳︎✳︎
「七瀬…俺を見てくれ」
自分から目線を逸らしている彼女の左頬をそっと包み、ゆっくりとこちらに向けると顔がやや赤い。
どうした?七瀬……
「……すごく緊張して来て…すみません……」
……なるほど。
「それは君だけではないぞ?」
俺は彼女の右腕を掴んで自分の胸に当てる。
全集中の呼吸は自分の部屋に戻って来た時から使っていない。ありのままの自分を見てほしい……そう思ったからだ。
「本当だ。同じですね」
「ああ」
安心したのか、先程より表情が柔らかくなる七瀬。笑顔も少しこぼれる。
「傷……たくさんありますね」
彼女は俺の胸に当てていた右手を右肩に動かし、そこにある傷をそうっと触る。優しい手の感触に心がまた温かくなった。
「鬼殺隊に身を置いている限りは仕方のない事だろう?」
俺も彼女の左頬に当てていた手を下に滑らせ、鎖骨にある小さな傷を労うように触れる。古傷のようだ。
“昔の君にも会ってみたい” ふとそんな気持ちがよぎる。
しかし、まずはここを知りたい。それは……
「君の背中を見せてくれないか」
七瀬が自分と出会う直前に負ったと言う傷。胡蝶の話によると、それなりに大きなものらしい。
焦茶の双眸を上から覗き込みながら、彼女にそう言った。