第43章 ★ 獅子なる星が降る夜に〜彼目線〜 ★ ✳︎✳︎
「すみません、急に。こんな綺麗な夜空の下にいると、気持ちがその……高まってしまって」
真っ赤な顔を晒しながら、必死に誤魔化そうとする彼女。
そのままくるりと踵を返そうとしたので、俺はその細い腕をパシッと掴んだ。
「………」
あそこまではっきりとした思いを聞くと、このまま行かせたくはない。そう強く思った。
「あの!聞き流して頂いてかまいませんから。私戻りますね」
……待ってくれ、沢渡………
そうして俺が掴んでいる腕から彼女が逃れようとした瞬間。ふわっと自分の腕の中にその細い体を引き寄せた。
体がかなり冷たい。
彼女をもう一度ぎゅ…と抱きしめる。
「……そう言う事はこちらから伝えるものじゃないのか」
「こちらからって……んぅ」
最後まで彼女が言い終わらない内に、沢渡の唇を掠め取るように自分の唇で塞ぐ。
たった一度だけ。しかし、ありったけの思いを込めた口付けを彼女に贈った。
柔らかい唇。甘くこぼれた吐息。その先をもっと知りたい。
君の心に触れたい。そしてその心に秘めている物を自分に見せてほしい。
————俺だけを見てほしい。
沢渡が……七瀬の事が大好きだから。