第42章 緋色のあなたへの贈り物 〜さつまいもの甘味を添えて〜 +
『今日はね…とっても大事な人の誕生日なの。スターチスで何か良いのある?』
『はい、わかりました。七瀬さん…黄色にしましょう。花言葉が愛の喜びと誠実、ですよ』
あの時のやりとりを彼に伝えると、おでこにコツンと杏寿郎さんのそれが当たった。
「今日は本当に良い一日になった。出来ればこのまま一緒に過ごしたかったが……任務は仕方がないからな」
「はい…私も今日が終わるまで一緒にいたかったのですけど」
シュン…とした私に杏寿郎さんはこんな提案をして来た。
「帰宅したら、俺の部屋に来てくれないか?夜中でも明け方でも構わない。君を待っている」
「わかりました。でも寝てて下さいよ、きちんと」
「ああ、わかった。6つ目の贈り物はその時に頂くとしよう」
また彼から口付けが降って来た。
顔を離せば私を見てニヤリと笑う恋人に、胸が跳ね上がってしまう。
「それってその……」
「君が考えている事で合っているぞ」
『え、恥ずかしいよ…』
声にならない声と共に、頭頂部から足先までを羞恥心が駆け抜けた。
「もちろんどの贈り物もとても嬉しかった。しかし俺は…」
“君に触れて、君と繋がれる事が何よりも嬉しいし、幸せに思う”
左の耳元に囁きと一緒に蕩けてしまう言葉が届く。
それから ——— 私が彼との口付けを着替えるまでに要した時間は、約1時間。
任務の用意をしながら、気持ちを何とか切り替え、討伐に向かった。