第42章 緋色のあなたへの贈り物 〜さつまいもの甘味を添えて〜 +
「恋人の君との思い出を形にしたかった」
「形に…ですか」
「ああ、そうだな」
彼が私の左手を自分の右手と絡めて来る。
「君が俺の継子になってもうすぐ一年。恋人になって丁度半年。たった一年、たった半年…と言えどもなかなか密度が濃い日々だったように感じる」
「そうですね…。言われてみればそうかも」
杏寿郎さんとの日々の稽古、師範と継子としての勝負、思いを告げて恋仲になった星降る夜、初めて2人で出かけた落語、宇髄さん宅での恋の勝負、巧のお墓参りに一緒に行った事、赤坂氷川神社での共闘、初めての喧嘩、わらび餅から新しい型を思いついた事、橙色の爪紅を指先にのせあった事……。
「本当です。今振り返っていたんですけど、確かに濃い日々でした」
ふふっと笑って彼を見ると、杏寿郎さんが優しい眼差しでこちらを見てくれていた。
「これからもよろしくな、七瀬」
「こちらこそ…杏寿郎さん」
互いの笑顔が重なる瞬間だ。
「甘味が5つ目の贈り物です。帰ったらみんなで食べましょうね?」
「うむ!実に楽しみだ!」
優しく吹いた風で黄色のスターチスが彼の掌で柔らかく揺れる。
花束を持つ杏寿郎さんは本当に素敵だし、綺麗だ。
この瞬間こそ写真に収めたい……。そう心に感じながら、煉獄邸までの道を彼と一緒に歩いて帰った。