第42章 緋色のあなたへの贈り物 〜さつまいもの甘味を添えて〜 +
「それじゃあ次は沢渡さんに座ってもらって、杏寿郎くんはそうだね、椅子の向かって左側に。うん、良いよ。はい撮りまーす……」
パシャ……パシャ……と写真機の音が30秒の間を経て再び響いていく。
「はい!2人ともお疲れさまでした。杏寿郎くん1人の写真は昨日撮ったから今日はもう終わりだよ」
「ありがとうございます」と彼と2人でお礼を伝えた写真館のご主人は窪田克(くぼたすぐる)さん。
そして、写真を撮る際に髪の手直し、着物の着崩れ等を整えてくれた奥様の真理子さんが、預かってくれていた黄色のスターチスを私に渡してくれた。
「昨日あなたもいらっしゃる予定だったのよね。体調はもう大丈夫なの?」
「はい、お気遣いありがとうございます。今朝熱も下がりまして…もう元気になりました」
それなら良かったわ〜と真理子さんは、私の髪を整えて笑顔で答えてくれる。
「じゃあ出来上がりは…昨日の物と合わせて、1ヶ月半後かな?」
「わかりました。杏寿郎さん、私、受け取りに来ますよ」
「そうか?では頼んだ!」
「はい!」
★
写真館を出て、帰路の途中。気になっている事を彼に聞いてみた。
「どうして私と2人で写真を撮りたいって言って下さったんですか?……」
「ん?気になるのか?」
「はい、それはもちろん」
撮りたいと言ってくれたのはもちろん嬉しかった。でも私は継子だ。煉獄家に住んではいるけど、家族…とは言えない。