第42章 緋色のあなたへの贈り物 〜さつまいもの甘味を添えて〜 +
「やはり君は飽きないな…」
「んー…恥ずかしいですよ……」
熱くなった頬を手で仰ぎながらしばらく進むと、急に杏寿郎さんが真剣な声色になる。
「君とこの後行きたい所がある。付き合ってくれ」
「あ、はい」
彼はスターチスを左手に持ちかえた後、右手を私の左手に絡めた。
花束を持っている杏寿郎さんは予想以上に素敵で、ほうっとため息が出てしまう。
彼と歩くようになって人から見られると言う事にも大分慣れたけど、明らかに先程より視線の回数が増えた。もちろん女の人が多数だ。
「ん?」
「いえ、花束が似合う男性って良いなあって思ってました」
「そうか?」
「はい!」
杏寿郎さんと笑顔で歩いていると、目的の場所に着いた。
「ここって……」
目の前のお店の看板には「窪田写真館」とある。昨日私も同行する予定だった写真館だ。
「七瀬…君と2人で写真を撮りたい」
「え……」
さっきと立場が逆転したかのように。今度は私が驚く番だった。
★
「あ、良い表情ですね。もう二枚程写すよー」
パシャ……パシャ……と写真機の音が響く。ここは煉獄家がよく利用しているお店だそうで、お店のご主人と奥様は杏寿郎さんの事を幼少の頃から知っているらしい。いわゆる旧知の仲だ。