第42章 緋色のあなたへの贈り物 〜さつまいもの甘味を添えて〜 +
「ありがとう。花束を貰うのは初めてだが、とても嬉しい」
「男性から女性に花束を渡すのは一般的だと思うんです。でも私は…」
彼の耳元に口元を近づける。
「ん…?」
「自分からあなたに思いを伝えました。だから女性から渡すのも良いかなって……」
「確かにそうだ。君からだった」
杏寿郎さんから耳を離すと、いつものようにヨシヨシと頭を撫でてくれた。
一通り、彼とのやりとりが終わるとすぐ横でパチパチ…と拍手が聞こえた。看板娘が満面の笑みで私達を見ている。
「お店に出るようになって、たくさんの方がお相手にお花を渡す姿を見て来ましたけど、このやりとりは初めて見ました。お2人共、ありがとうございます!」
「あ……そうなんだ……」
この生花店は恋仲になりたい男女、恋仲の男女がお花を相手に贈ると成功したり、更に深い仲になれると評判の花屋さんだ。
とは言え……。
そのお花を渡すのはさっき私が言ったように男性側から。女性側からと言うのは初めてらしい。
段々と顔が赤くなっていく私。そして、杏寿郎さんはくつくつと笑っている。
「お2人、いつまでも仲良く〜。またお立ち寄りくださいね!」
果耶ちゃんは手を降りながら見送ってくれた。