第42章 緋色のあなたへの贈り物 〜さつまいもの甘味を添えて〜 +
「よし、今日はこの着物」
朝食を食べ終わった私は自分の部屋に戻って着替え始めた。
これからある物を渡す為に、杏寿郎さんと町に出かけてくるつもり。
着物の色に選んだのは橙色。彼と初めて出かけた時に着た着物だ。
紅もあの時と同じ曙色。前回同様、白粉はサラッとはたく程度に。
大部分の用意が出来て、さて爪紅…と思っていた時に襖の外から声がかかる。
「俺だ。入っても大丈夫か?」
「どうぞ」
了承の返事をすると、濃紺の着物と羽織を纏った彼が入って来た。
わあ…示し合わせたみたいで嬉しい!何故なら彼の着物も私と初めて出かけた時に着ていた物だから。
「髪を結んでほしい」
結び紐を私に渡しながら言ってくる彼に、はいと返事をする。
★
「ありがとうございます」
「君との約束だからな」
町に向かっている私達。杏寿郎さんは頭の上で髪を一つに結んでいて、また一段とカッコいい姿。
そして見た目が派手だから、濃紺のような落ち着いた色を着ると本当に引き立つ。もう既にすれ違う女の人の殆どが顔を赤くする光景に出くわしている。
やっぱり自分にはもったいない恋人だ。もっと自分磨きを頑張ろう……と1人決意してたら、右手を絡められた。
「どちらも似合っている。綺麗な2色だ」
「…ありがとうございます。嬉しいです」
私の左右の爪には緋色と橙色が交互に乗せられている。これは杏寿郎さんの髪を結んだ後に彼が塗ってくれた。
うん、本当上手。左手の爪も見て、心が温かくなる。