第42章 緋色のあなたへの贈り物 〜さつまいもの甘味を添えて〜 +
あ、これを伝えないと…。
大好きな彼の腕の中を堪能したいけど、それよりも大事な事を。
「杏寿郎さん」
「ん?どうした?」
きちんと気持ちを込めて伝えたい。だから深呼吸を1つして、心を落ち着かせた。
「お誕生日おめでとうございます。今日この言葉を伝えれる事が私、とても幸せです。あなたが大好きです」
それから彼の頬に……と考えていたけど、そう言えばここが1番嬉しい…と言われたのを思い出し、恋人の唇に口付けを贈った。
ゆっくりと顔を離すと、少しきょとんとしている彼がいた。ごくごくたまに見る事が出来る、かわいい杏寿郎さんだ。
「これが1つ目のお祝いです。いくつかあるので楽しみにしていて下さい」
もう一度だけ小さな口付けを贈った後、私はまた彼にぎゅっ…と抱きついた。
「七瀬」
「どうしました?」
すると頭上から、とても柔らかい声が聞こえる。
「2つ目も今貰ったぞ」
「……そうなんですか?」
首を傾げながら、私が顔を上げるともうかわいい彼ではなく、いつもと同じ杏寿郎さんがいた。
2つ目……何だろう?わからないなあ。
「思いつかないか?」
「はい……わかりません」
そうか…と言いながら、彼は私の顎を持ち上げる。
「熱が下がって、元気になったいつもの君だ」
その言葉の後、杏寿郎さんからの優しい口付けが私の唇に届いた。
「良いの、ですか? これが2つ目で」
「ああ、無論だ。今の俺には待ち望んだ贈り物だからな!」
左頬を包まれ、その感触を味わうように瞳を閉じる。すると私の唇にもう一つ口付けが届いた。