第42章 緋色のあなたへの贈り物 〜さつまいもの甘味を添えて〜 +
「明日の為に色々と準備されていました。1ヶ月前から一緒に計画をたて始めたんです。食べる物だったり、贈る物だったり…」
「ああ、知っている。七瀬は隠し事ができないからな」
ここ1ヶ月の恋人の様子を思い出す杏寿郎。
見つかりそうになって焦る七瀬はとてもかわいらしかった。
「早く元気になってほしいです」
「そうだな……千寿郎、俺は今夜の準備をしないといけない。すまないが、後は頼めるか?」
はい、と頷いた千寿郎は兄が七瀬の右手を両手でゆっくりと握る様子を見て心が温かくなった。
「大丈夫です。兄上はご準備を」
「ああ、ありがとう」
そうして、杏寿郎は彼女の部屋を後にした。
千寿郎は兄の言っていた通り、朝方見た時より顔色が良くなっている事を確認するとホッと息をついた。
『氷嚢の氷を替えないと。七瀬さん、明日みんなで一緒に兄上をお祝いしましょうね』
心の中で彼女に声をかけた彼は布団を改めてかけなおし、持参したおぼんの上にお茶碗、匙、氷嚢、水差しを乗せると一旦部屋を出る。
途中、廊下でこちらに向かって来ていた父と出会い、千寿郎は七瀬の様子を伝えた。