第42章 緋色のあなたへの贈り物 〜さつまいもの甘味を添えて〜 +
「すみません…本当に勘弁して下さい……」
顔の表面温度が一気に上がった顔で彼を見ると、ようやくわかった…と返答してくれた。
「ではもう横になると良い」
「はい……」
彼が背中と肩を支えて、布団に寝かせてくれると私の額に氷嚢を乗せてくれる。
「杏寿郎さん……」
私は彼に右手を伸ばす。
「何だ?」
両手で私の右手をしっかり握ってくれた。
「お願いです…しばらくこうしてて下さい……」
「ああ、わかった。ゆっくり休め」
はい……と答えると、安心感からか瞼がまた重くなって来た。
「早く……元気に…ならな……」
そこで、私の意識は途切れた——
『眠ったようだな』
杏寿郎は右手で七瀬の左頬を包むと、柔らかく撫でた。
自分が来た時よりいくらか顔色が良くなった気がする。
ほっと安堵の息を漏らして、彼は寝ている恋人にそっと口付けを1つ落とした。
『任務に行く準備をせねば…』
そう杏寿郎が考えていた時、襖の外から控えめに声がかかる。
「兄上。七瀬さんの様子はその後如何ですか?」
夕飯の買い出しから戻って来た弟が、静かに部屋に入って来た。
「粥は全て食した。明日には元気になるやもしれん」
千寿郎はその言葉を聞いて、少しホッとする。