第42章 緋色のあなたへの贈り物 〜さつまいもの甘味を添えて〜 +
「杏寿郎さん、嬉しいんですけど、うつしたら大変ですから…」
私は腕の中から逃れようとする。だけど、彼は離してくれない。
「簡単に病をもらうほど、ヤワな体ではないぞ?」
「いや…それはそうかもしれませんけど……」
……更にぎゅっと抱きしめられる。観念した私はゆっくりと彼の背中に腕を回した。
あったかい…さっきまでの心細さを払拭する心地よさ。
この腕の中にいると、怖いものなんてない。そんな気になれるのが不思議だ。
「………」
「杏寿郎さん…?どうしました?ん……」
彼の右手が私の顎をそっと掴んだかと思うと口付けをされた。
「だから…うつります」
顔と顔の間に右手を入れるのだけど、その手は彼の左手に絡め取られる。
「ダメか?」
う…またこう言う事を言う………。
だけど!
「ダメです。柱が体調を崩したら大事(おおごと)ですから。それに…」
ん?と少し首を傾げる杏寿郎さんにこう言う。
「今の状態で口付けされると、熱上がっちゃいます…」
「む、それは困るな」
「はい…だから元気になってからならいくら…」
あ…ダメだ。さっきの口付けで本当に体温が上がって頭が回らなくなってる。何言ってるんだろ…。
「いくらでもか?」
ぼうっとした私の左頬を優しく撫でてくれる。本当にまた熱上がりそう……