第42章 緋色のあなたへの贈り物 〜さつまいもの甘味を添えて〜 +
「ありがとうございます…」
彼にお礼を言って、顔を向けると私が大好きな笑顔がそこにあった。
大きめのお茶碗に美味しそうな黄色い粥が入っている。
杏寿郎さんからお茶碗と匙(さじ)を受け取って、頂きますと言って食べ始めた。
「美味しいです、熱すぎず、丁度良い温度ですね」
「そうか!ならば良かった…」
うん、それに優しい味だなあ。さすが千寿郎くん……
あれ?これって……それに気づいた私は思わず笑顔になった。
「杏寿郎さん」
「どうした?」
「卵、割ってくれました?」
「む……何故わかった?」
彼が目を見開く。
「殻がほんの少しだけお茶碗に入ってました。千寿郎くん、卵割るの凄く上手だから、あれ?って…」
まいったな、と言う顔をした杏寿郎さんはそうだ…とあっさり認めた。
「ありがとうございます。とても嬉しいです」
彼が卵だけでも割ってくれた、と思うと急に心が温かくなって少しずつだけど、食欲も出て来た。
「ご馳走さまでした。すっごくすっごく美味しかったです」
「作ったのは千寿郎だぞ?」
「それはそうなんですけど。卵を落としてくれたのは杏寿郎さんです。私はそこが1番嬉しかったです」
にっこり笑うと、彼はいつものようによしよしと頭を撫で、お茶碗を私から受け取っておぼんに置く。
「七瀬」
名前を呼ばれたのとほぼ同時に、抱きしめられた。