第6章 諦めないこと、続けること、信じること
「巧を看取って下さったのが煉獄さんで良かったです。こうして毎月お花を備えるのが自分だけじゃないんだな、と思うと……とてもありがたいですよ」
「そうか。それなら良かった」
「はい」
私は一度頷くと持っていた巾着の中から、小町に届けてもらう予定だった手紙を取り出す。
「お墓参りが終わったら、お出ししようと思っていたお手紙です。せっかくお会い出来たのでお渡ししますね」
「どうぞ」と言って煉獄さんに渡すと快く受け取ってくれた。
「ではありがたく頂こう。君からの手紙は読みがいがあるからな!カステラの話はなかなか笑えたぞ」
「だって……食べ物の恨みは恐ろしいんですよ?」
ああ、もう書かなきゃ良かった。恥ずかしいな。
「さて、沢渡少女。すまないが俺はもう行かねばならない。君はどうする?」
煉獄さんは隊服の胸元にある衣嚢(いのう=ポケット)に手紙をしまうと、私に聞いてきた。
「相変わらずお忙しそうですね……そうですね、私も帰ります。買い物もありますので」
持っていた羽織を彼に返した後、掃除用に持ってきた桶などを元にあった場所に戻した。
最後にお墓の前に立ち、心の中で『また来るね』と言って、私は煉獄さんの隣に並ぶ。