第40章 彼を褒めれば笑顔に当たる ✳︎✳︎ +
『爪紅塗ったらもっと綺麗だろうなあ……』
「塗らないぞ」
え………?驚いて彼の顔を見る。
「塗らないって……?」
「爪紅は塗らないぞ、と言う意味だ」
「私、何も言ってませんけど…」
「君は本当に考えている事が顔に出るな…そう言う所がたまらなくかわいい」
フッと笑った杏寿郎さんの空いている右手が私の左頬をそっと包む。そして、彼の大きな掌がそのままゆっくりと撫でてくれた。
これをされると、本当に胸がぎゅっと掴まれたようになる。
「絶対似合うと思うんですよね。赤じゃなくても橙色とか…」
改めて彼の左手に視線を落とす。
「最近、男性も身だしなみとして爪だけ磨いたり、形を整えている方は結構いらっしゃるようですよ?宇髄さんも塗られてるじゃないですか…」
「う……む。しかしな」
ためらう杏寿郎さんだ。
「俺は宇髄とは違う」
「なっ……!?」
「あ、杏寿朗さんの思ってる事当たったー。良かった」
やっぱりね、そんな事考えていると思ってたよ。
「湯浴みしたら案外簡単に落ちるんですけど……」
この私が何気なく発した言葉にほう…と彼が反応する。
何か悪い顔……待って、これ前にも見た事ある…あ……!しまった!湯浴みって………
「最近君と共に入っていない気がする」
「え……そうでしたか?」
私の右手に乗せていた彼の左手がきゅっ…と自分の手に絡められる。
「たやすく落ちると言う事なら、是非お願いしたい」
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※ストーリーの都合上、簡単に落ちる…と言う設定にしました。