第38章 よもやのわらび餅
「修復した炎柱の書でも、陸から捌ノ型はあまりハッキリと確認出来なかったようですね」
「そうだな」
だから槇寿郎さんが今日の突き技を書き残しておくように…と言ってくれた。
「実は漆ノ型と捌ノ型もぼんやりとですが、思い浮かべています」
「本当に君はいつも俺の予想を超えて来るな」
ぽん、と私の頭に大きな掌が乗る。
「指導もなかなか上手だった」
「ありがとうございます…杏寿郎さんがいつも上手に教えてくれるお陰だと思います」
「そうか?」
「はい!」
そしてよしよし、と頭を撫でてくれる彼。これをされるだけで笑顔になる私。
「しかし……わらび餅から型を思いつくとは…」
「そうですね。私もわらび餅から閃くとは思いませんでした」
「でも…新しい事を思いつく時って、日常のふとした所から湧いてくるのかもしれません」
「そうかもな」
今日のおさらいも含めた記載が終わったので、パタンと記録帳を閉じる。
そして、右横にいる杏寿郎さんに体を向けた。
「どうした?」
「後でじっくり見せて欲しいって言ってくれたから」
私は両手の爪を彼に改めて見てもらう。
ああ…と言って私の両手を優しく持ち上げ、自分に近づけた。