第37章 不機嫌な萌黄に八雲謝る、の巻
「沢渡、気休めなら…」
「気休めなんかじゃありませんよ。私、本当に思っています」
彼の言葉を遮って、はっきりと伝えた。
「実際、私の周りに何人かいらっしゃるんです。”村田さんって良いよね”って言ってる方達……ね?沙希」
「はい」と彼女は力強く頷いた。
「柱の方達は憧れなんだけど、少し恐れ多い。でも村田さんは距離が近くて、親しみを感じる」
「何と言っても安心する。皆さん最後に口を揃えてこう言われます」
嘘……と口をポカンと開ける村田さん。
「だから、近い内に良い事起こるかもしれませんよ?」
「………何か信じられないんだけど…そっか…そうなんだ」
少しずつ笑顔になる様子が、先輩だけどとっても微笑ましい。
「お待たせしました。黒蜜のわらび餅です」
店員さんが、先程注文したわらび餅を持って来てくれた。
ありがとうございます、とお礼を言った村田さんはわらび餅を食べ始める。
「やっぱここのわらび餅、最高!」
彼はこの日一番の笑顔を見せてくれた。あれ?何かさっきより餅の数が多い気がする…。
ふと厨房を見ると、お店のおかみさんがこちらを向いてニコニコしていた。
ああ、そうだった。おかみさんも村田さんの事、褒めてたっけ。
“村田くんは良いよねぇ。娘の婿に欲しいよ”って。