第37章 不機嫌な萌黄に八雲謝る、の巻
「はあ……そっかあ」
村田さんががっくりと項垂れ、ふうとゆっくり息をついた。
「あの…大丈夫ですか?」
「ん、ああ…。何とかな……」
村田さんは冨岡さんと同期だ。きっと思う事もたくさんあるんだろう……。
「そうか、佐伯か……。さっきここに来る途中で白石には言ったんだけどさ」
何が彼の口から発せられるのだろう。私の心拍数が右肩上がりで少しずつ上昇していく。
「ええ、それで栞さんがどうしたんですか?」
「沢渡と藍沢だから正直に言うな。俺、佐伯の事少し前から良いなって思っていたんだ」
“スコシマエカライイナッテオモッテイタンダ”
この部分だけあまり耳馴染みがない、異国の言葉に聴こえた。
“冨岡さんが栞さんと恋仲になった”
それを聞いた時と同じくらい、衝撃が頭に走る。
「そうなんですか……??」
「栞姉さんをそんな風に思っていた方がいらっしゃるなんて…」
うん、と彼は頷き言葉を続ける。
「佐伯はちょっと変わってるかもしれないけど、明るいし優しい。見た目だって……可愛い」
「前、任務で一緒になった時に、村田さんがいると安心しますって言ってくれてさ。俺、今までそんな風に言われた事なんてなかったから本当に嬉しくて……」