第37章 不機嫌な萌黄に八雲謝る、の巻
「自分から言いましょうか?」
白石くんが言葉を発した。
「うん。じゃあ頼む……」
2人が目くばせすると、どうしたの?と私の右隣の席に移動した沙希が彼に聞く。
「沢渡さん」
「え?私?どうしたの?」
沙希が今しがた発した言葉と全く同じ言葉が出てしまった。
「水柱様って沢渡さんの兄弟子でしたよね?」
ここで冨岡さんの名前か…沙希の方を向くと、どうやら私と同じ事を考えているらしい。そんな雰囲気が伝わって来た。
「うん…栞さんと一緒にいた所でも見かけたの?」
白石くん、そして村田さんの目が途端に見開く。
「…沢渡、お前見てたのか……?」
「はい、実はこっそりと見てて。先回りしてお店にやって来たんですよ。きっとお2人がいらっしゃると思って…」
私がふふっと含み笑いをすると、隣の沙希が堪えきれない!と言った様子で体を震わす。
「……と言うのは、すみません。冗談です。実は私もさっき冨岡さんの話を沙希から聞いたばかりで……」
「はあ?何だよそれ…」
「衝撃が大きくて、まだ信じ切れてないんです…」
「あ、じゃあ私詳細をお話ししますね!」
笑いすぎて涙目になった沙希が、私にしてくれた話を再度2人に話し出す。
この話を聞いている間、村田さんと白石くんの百面相がなかなか凄くて、また笑ってしまったのは言うまでもない……