第6章 諦めないこと、続けること、信じること
今日は巧の月命日。
ちょうど非番と重なったので、隊服ではなく、着物でお墓参りに来てみた。
「何か揃いのものが欲しいな」と巧に言われて仕立ててもらったもので、彼の羽織と同じ青紫色の着物。
ちなみに隊服の上に着ている青柳色(あおやぎいろ)の羽織も彼からもらったものだ。
「今日はまだないんだ」
冨岡さんに先日聞いてみた、ここ数ヶ月の疑問。
巧が亡くなった次の月から、月命日もしくはその前後にお花が供え始められた。
置かれているものは毎回同じで、白・黄色・紫の3色でまとめてある。花の名前は、スターチスと言うらしい。
いつも通りにお墓の掃除をして、持って来たお花を備えると手を合わせる。
『巧の所に来る時はいつも天気が良いけど、今日もやっぱり晴れてて気持ちが良い日だよ』
そう心の中で彼に話しかけていると、こちらに向かってくる足音がした。目を開け、音が鳴る方向を見てみると ——
やって来たのは3色のスターチスを手に持っている煉獄さん。
墓地だからかいつもの炎の羽織は腕にかけていて、隊服のみの姿だった。
「おはようございます」
私は彼に体を向け、会釈をしながら挨拶をした。
「……沢渡少女か?」
煉獄さんはこちらを見ているが、どこか怪訝そうな表情をしている。
あ、こんな格好だからかな?
「そうですよ」
私はふふっと笑うと、ゆっくり立ち上がった。
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青柳色(あおやぎいろ)…… 青みを増した強い黄緑色