第37章 不機嫌な萌黄に八雲謝る、の巻
「そっかそっか。でも沢渡凄い良い顔してるよ」
「…そうですか?」
わらび餅を一つ楊枝で掬おうとするけど、ぷるぷるしててなかなか口に持っていけない。
「わらび餅って案外食べるの難しいよな。楊枝を適当に刺すんじゃなくて、的確な所を刺さないと上手く食べれない」
村田さんはスッ…とある一点を刺して、何なく口に入れた。
「抹茶味も美味いな」
目の前の彼が幸せそうな顔をして頬張っている。
“的確な所かあ”
………スウっと軽く呼吸をして、ここかな?と思った場所を刺す。
あ、上手くいったかも!
手首を自分の方に返しても楊枝から落ちない。私はそのまま口にわらび餅を入れた。
「うーん、きなこも美味しいですよ」
「お、上手く出来たじゃん!ここの甘味、何でも美味いけど俺わらび餅が一番好きだわ」
彼はまた何なくわらび餅を掬って口に次々と入れていく。
「所で…今日はどうしてお2人、ここに来られたんですか?」
私は村田さん、そして彼の左隣に座って抹茶のわらび餅を食べている白石くんを交互に見ながら、問いかけた。
「いや、白石と会ったのって全くの偶然でさ。俺達普段から一緒に飯食いに行ったりしてるんだけど……」
「はい…」
2人、仲良いもんね。優しい雰囲気とか纏う空気が一緒だし。