第37章 不機嫌な萌黄に八雲謝る、の巻
「前も言ったかもしれないけど、私にはもったいない人だよ。同じ炎の呼吸の使い手としても、心の底から尊敬してるしね。今は敵わなくてもいつかきっと……そんな風に思わせてくれる」
「最上の師範だし、最高の恋人なの」
私は沙希の目を真っ直ぐに見据えて、はっきりと言った。
「七瀬さん、本当に幸せなんですね。とても羨ましいです…。私も彼に会いたくなって来ました」
ほう…と息をつきながら、彼女は自分の恋人を思い浮かべているのだろう。今日見た中で1番可愛い顔をしている。
「白石くんとは最近どうなの?」
「唯織(いおり)くんですか?…はい、お陰様で仲良くしてますよ。でも私達って同期だし、同い年だから…」
白石唯織くん。私と同じ水の呼吸の使い手で、沙希の恋人。
「等身大と言えば聞こえは良いかもしれませんが、まだまだ子供っぽいなあって感じる事も多くて」
「15歳でしょ?それは仕方ないんじゃないかな」
「はい、それはわかっているんですけどね」
うーんと唸りながら、抹茶を一口飲む沙希。
「沙希の事、物凄く大事にしてくれてるじゃない。1番大切な事だと私は思うよ?」
「ふふ、そうですね。確かに大事にはしてもらってます」