第37章 不機嫌な萌黄に八雲謝る、の巻
「と言うわけでね。“勝負”と名前が付くものには杏寿郎さんに全敗してるの、私……」
思い出して再度ゆっくりと息を吐き出した。
「…七瀬さん」
「何?」
沙希が私を物凄く同情的な目で見ている。
「自信無くしませんか?流石に」
「うん、それはもう。私も剣士だしね」
残っているあんみつを全部食べ終わった私はこう続ける。
「自信は無くすんだけど、その後必ずと言って良い程労いがあるの」
「わあ……炎柱様、よく七瀬さんの事理解されてますね」
沙希の言う通り、ここが杏寿郎さんのすごい所。稽古とそれ以外の落差がはっきりしている。
厳しい所は容赦なく。そしてそれ以外の時間はこれでもか……と言うぐらいに甘えさせてくれる。
『恋人は甘やかすものだと思うぞ』
いつだったか、彼がそんな事を言っていた。お陰で甘える事は以前と比べて、凄く上手になったと思う。
杏寿郎さんと恋仲になって嬉しかった事は数えきれないぐらいあるけれど、好きな人に甘えれるようになったのが私の中での1番の変化。
心を着飾らなくて良い、ありのままの自分を出せる相手…それが私にとっての杏寿郎さんだ。