第37章 不機嫌な萌黄に八雲謝る、の巻
『鮮やかな赤い爪紅が見たい』
彼から次回一緒に出かける時はこうしてほしいと希望を言われた。
だからまず、おしゃれな沙希に見てもらおうと思って塗って来た。
「ねえ、沙希。これおかしくないかな?」
はい?とお品書きから顔を上げた彼女は、自分の目の前に出されている私の両手を見ながらみるみる内に大きな目を見開いた。
「すみません…びっくりしてしまいました。えー七瀬さんが緋色を塗る日が来るなんて……」
「うん、私もびっくりしてる…」
自分の爪先には10個の緋色がきらきらと鮮やかに輝いている。
「これは何か意味がある色なんですか?」
ずずいっと身を乗り出して、私の爪紅をじっくりと見る彼女に理由を説明する。
「七瀬さんもすっかり恋する女子ですねー」
私、嬉しいです!とにっこりと笑いかけてくれた。
「そうだ、七瀬さん。恋と言えば…」
「ん?どうしたの?」
私達は食べたい物を注文をして、話に花を咲かせる。
……20分後。
目の前のあんみつを食べながら、驚きを隠せずにいた。
「え?冨岡さんが栞さんと?」
「そうなんです。水柱様が私の姉弟子と」
冨岡さんって私の兄弟子のあの人だよね……。